県庁の近くにはお城がある!?県庁所在地とお城の関係性

お城めぐり

お城と県庁所在地には、深いつながりがある。

例外はあるが、県庁の近くにはお城が建っている、ということが多いのだ。

古めかしい門をくぐり抜けたら、近代的な建物の県庁がある、というなかなか奇妙な場面にも出くわしたりする。

それを見慣れた人にとっては当たり前だと思うかもしれないが、日本の歴史によってそうなった面白い事例だ。

自分の地元はどうだったかと、思い出しながら見ていこう。

お城の近くにある県庁

愛知の例

お城の近くに県庁がある場所。例えば愛知県。

県庁所在地である名古屋市は、名古屋城が有名だ。

名古屋城の最寄り駅である「市役所前駅」という地下鉄の駅から地上へ出ると、目の前に昭和レトロで趣のある造りをした愛知県庁と名古屋市役所が並ぶ。大通りを挟んで名古屋城の大きな堀や石垣が目の前に広がる。

左が名古屋市役所 右が愛知県庁

余談だが、どちらも明治初期に明治天皇の即位を祝って建設されたもので、当時のままの姿を残しており、国の重要文化財に指定されている。

右側の愛知県庁には名古屋城の天守閣風の屋根が頭に乗っている。

福井の例

福井県の県庁はさらに面白い。

下の写真を見ていただきたい。

福井県庁

手前の池は福井城を構成する堀。奥には石垣が見えるのが分かるだろう。その中に建てられている建物がなんと、福井県庁なのだ。お城の中に県庁が存在する例もある。

地図で上から見るとさらに分かりやすい。

このように、県庁が城下町に存在する例が、全国にはたくさんあるのだ。

城下町とは名前の通り、城の周りに発展してできた町。「武家屋敷」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれないが、武士や町人の住まい、様々なお店などがある、政治・経済の中心地でもある。

まずは、なぜそうなったかという理由の前に、全国でどのくらいの都道府県が、この城下町に県庁があるケースに当てはまるのかを見ていこう。

城下町が県庁になった31都府県

県庁が城下町にあるケース。要するに県庁所在地の近くにお城がある都道府県を紹介しよう。

全国で31都府県が該当する。

(都道府県)(県庁所在地)(城)(備考)
秋田県秋田市久保田城
岩手県盛岡市盛岡城
山形県山形市山形城県内最大城下町は米沢
宮城県仙台市仙台城
福島県福島市福島城県内最大城下町は会津若松
栃木県宇都宮市宇都宮城
群馬県前橋市前橋城
茨城県水戸市水戸城
東京都新宿区江戸城
山梨県甲府市甲府城
静岡県静岡市駿府城
愛知県名古屋市名古屋城
富山県富山市富山城
石川県金沢市金沢城
福井県福井市福井城
三重県津市津城
和歌山県和歌山市和歌山城
大阪府大阪市大阪城
鳥取県鳥取市鳥取城
島根県松江市松江城
広島県広島市広島城
岡山県岡山市岡山城
香川県高松市高松城
愛媛県松山市伊予松山城
徳島県徳島市徳島城
高知県高知市高知城
福岡県福岡市福岡城
佐賀県佐賀市佐賀城
大分県大分市府内城県内最大城下町は中津
熊本県熊本市熊本城
鹿児島県 鹿児島市鹿児島城
県庁所在地が城下町の都道府県

皆さんの地元は入っていただろうか。

中には、「そんな城があるなんて知らなかった」というものもあるかもしれないが、ほとんどがその都道府県を象徴するお城のはずだ。

では、なぜこのようなケースが全国で多いのか。

なぜお城の近くには県庁がある?

それは江戸時代の「藩」という仕組みと、明治維新の際の土地の再利用が理由だ。

江戸時代から明治時代なる歴史の過程で、このようなケースが多くなった。

ざっと流れをまとめると下の図のようになる。

江戸時代、全国は現在の都道府県よりもさらに細かく領地が分けられた「藩」というものに分けられていた。

「藩」とは全国の地方のお殿様(=藩主)が、江戸幕府から与えられた領地のことで、お殿様(藩主)のレベルによって与えられた領地が大きかったり小さかったりする。

そのお殿様は、藩の領地の中で1つだけお城を建てることができた。(小さな藩はお城が建てられないという例外的なルールはあったが。)

そのお城が藩の中心地になったという形だ。

しかし、明治維新によって徳川幕府は滅びる。

そして新政府軍によって新しい国家が形成されると、「廃藩置県」で藩が県に変わる。お殿様だった藩主も藩主ではなくなる。

お城も持ち主がいなくなり、建物が取り壊されたりしたが、藩庁のあった城下町はすでに発展していたこともあり、城のあった広大な土地は軍事施設として利用することもでき、そのまま県の中心地になった。

このように、県庁所在地が城下町であることは、江戸幕府から明治政府に移行する際の必然的な流れであったことが分かってきた。

しかし、県内に発展した城下町がありながら、県庁所在地になれなかった例もある。

じゃない方県庁の16道府県

以下の図が県庁所在地が城下町ではない例。じゃない方県庁所在地の16道府県だ。

意外と多いな、というのが個人的な感想。

(都道府県)(県庁所在地)(県庁所在地になれなかった城下町)
北海道札幌市松前城
青森県青森市弘前城
埼玉県さいたま市(浦和)忍城
千葉県千葉市佐倉城
神奈川県横浜市小田原城
新潟県新潟市高田城
長野県長野市松本城
岐阜県岐阜市大垣城
滋賀県大津市彦根城
奈良県奈良市大和郡山城
京都府京都市
兵庫県神戸市姫路城
山口県山口市萩城
長崎県長崎市島原城
宮崎県宮崎市延岡城
沖縄県那覇市首里城(かつては首里市)

じゃない方になった理由は、それぞれの道府県によって異なる。

例えば…

  • 新潟市
  • 横浜市
  • 神戸市
  • 長崎市

これらは発展した城下町ではなく「重要な港町が県庁所在地」になった例である。

江戸時代後期、ペリーがやってきて日本が開国する的な頃の話、日本は5つの港を開港し外国人の受け入れ口とした。

その5つの港とは、北海道の函館を含めた新潟、横浜、神戸、長崎である。

要するに、これらの4つの県庁所在地は、「港町を県庁所在地にしよう!」とした例だ。

姫路城という立派なお城がある姫路市だが、神戸という港町には敵わなかった。仕方ない。

小田原市は、元々小田原県という県が存在したが、明治時代の合併により神奈川県に吸収され、県庁所在地も横浜市に持っていかれた。

このように、調べてみると、じゃない方県庁所在地には1県1県にドラマがある。

青森は弘前城という城下町があったが、弘前市があまりに奥まったアクセスの悪い場所にある、という理由で青森市になった、というちょっと悲しい例など。

次回以降は、城下町じゃない方の県庁所在地、ひとつひとつのドラマを紹介していきたい。

コメント

  1. […] […]

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