東京を代表する観光地、浅草。
歴史を感じる建物や文化が溢れ、国内外問わず多くの人に人気だ。
その浅草で欠かせない観光スポットが、浅草寺。
雷門で写真撮影をし、食べ歩きが楽しめる仲見世通りを抜けると、本堂が見えてくる。参拝をしたら、日本一凶の数が多いと言われるおみくじに一喜一憂する。
間違いなしの定番パターンだ。
しかし、今回の記事ではこの定番パターンに加え、お隣の浅草神社へも足を運ぶことをおすすめする。
なぜなら、浅草寺と浅草神社を知ると、お寺と神社の意外な関係性が分かる、かもしれないからだ。
実は、お寺と神社が隣同士にあるという例は、意外とレアなのだ。
浅草神社とは?
浅草寺は都内屈指の人気観光スポットだから、改めて説明はいらないだろう。
まずは、浅草神社の紹介から。
浅草寺を正面にした時に、浅草神社はその右奥に存在する。
浅草神社は、年1回行われる三社祭がとても人気で、お祭りが行われる3日間で約180万人の観客が集まるほどだ。
また夜にはライトアップが行われており、幻想な雰囲気の中お参りすることもできる。
大きくて迫力のある浅草寺の社殿に比べると、浅草神社の社殿は一見質素ではある。
しかし、江戸時代に3代将軍徳川家光の寄進によって建てられた社殿が現存しており、国の重要文化財にも指定された貴重な建造物である。
浅草寺と浅草神社の関係性を見ていく前に、そもそもお寺と神社の違いを知っておこう。
お寺と神社の違いとは?
今まで、お寺と神社の違いや関係性を、考えたことがなかった方もいるかもしれない。そもそもお寺と神社の違いは何なのだろうか。
まず、お寺と神社では、そもそも宗教が違う。
お寺は、仏教の建物。仏教はインドが発祥で、日本には古墳時代に中国から伝わる。
一方神社は、日本古来からある、神道という宗教の建物だ。
例えば、教会を見てなんとなく「これはキリスト教の建物だな~」と思うだろう。宗教に詳しくなくても、なんとなくそう思えるはずだ。
お寺と神社にも、それと同じことが言えるのだ。
仏教の施設であるお寺は、仏様を祀る。
「釈迦如来」や「薬師如来」という言葉を聞いたことがあるかもしれないが、これらが仏様であり、本殿に仏像として祀られている。
神社では、ありとあらゆる神様を祀る。
太陽の神様や海の神様、学問の神様など、目に見えない形で、それぞれの神社によって異なる神様が祀られている。
ざっくりと、本質的な違いはこんな感じだ。
ちなみに、浅草寺を「せんそうじ」、浅草神社を「あさくさじんじゃ」と発音するのは、お寺は中国から伝わった、仏教スタイルのため音読みが多いからだそう。
日本古来スタイルの神社では、訓読みが多いのだとか。
では、細かな違いを「これはお寺と神社どっちでしょう?」クイズと、浅草寺と浅草神社の例を見ながら、紹介していこう。
これどっち?①:鳥居があるのはお寺?神社?
まずは、入口にある鳥居について。
これは簡単だろう。
鳥居には、神様の住む領域と、人間が住む領域を区切る役割がある。神様の住む世界への入口的な意味を持つのだ。
なので、鳥居があるのは、神様を祀っている神社。
浅草神社にももちろん鳥居がある。
ちなみにお寺にあるのは、門。山門とも言う。
浅草寺では雷門があるし、仲見世通りと社殿の間にも門が存在する。
お寺の門にも、仏様がいる世界への入口としての役割がある。鳥居をくぐり抜ける時も、門を通る時も、「お邪魔します」という心持ちが大切だ。
これどっち?②:狛犬がいるのはお寺?神社?
社殿を守るようにして、両サイドに一匹ずつ並ぶ狛犬。片方は口を空けて「あ」の形、片方は口を閉じて「うん」の形。ここから「あうんの呼吸」という言葉ができたと言われている。
さあ、この狛犬がいるのはどちらだろうか。正解は神社。
先ほどのせた写真にもあるように、浅草神社に狛犬がいるのが分かる。
また、浅草神社内には、「夫婦狛犬」という人気の狛犬もいる。仲良く肩を寄せ合って並んでおり、縁結びのパワースポットとしても人気だ。
お寺ではどうだろうか。稀にお寺に狛犬がいる場合もあるが、一般的にはお寺に狛犬はいない。
浅草寺にもいない。
その代わり、雷門の左右に、こんな力士像がドカンと立っているのを見たことはないだろうか。
彫刻で作られた力強いこれらの像は、お寺の社殿を守る役割がある。有名なのは、運慶や快慶たちが創った、東大寺南大門の金剛力士像だろう。
これどっち?③:二礼二拍手一礼をするのはお寺?神社?
参拝方法としてよく言われる、二礼二拍手一礼。しかし、これがお寺での参拝方法なのか、神社での参拝方法なのかは知っているだろうか。
正解は、神社だ。
お寺の場合は、始めに礼をしたら、静かに手を合わせて合唱、そして終わって一礼。これが基本的な参拝方法と言われている。
これどっち?④:鐘が鳴るのはお寺?神社?
ゴーン、ゴーンと鳴り響く鐘。除夜の鐘などが有名だが、これはお寺だろうか、神社だろうか。
正解は、お寺。
「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」という正岡子規の俳句があるが、懐かしさを感じるような、日本人の心に響く音色だ。
鐘は時計がなかった昔、毎日決まった時間に鐘を鳴らすことで、人々に時間を報せていた。また、鐘の音を通して、仏様の声を広く届けるという意味もあるという。お寺ならではの音色だ。
浅草寺では、「時の鐘」という鐘があり、毎日朝6時に鳴り響く。もちろん大晦日には、除夜の鐘も。
参拝時、お寺では、賽銭箱の上にある鐘を鳴らす場合があるだろう。その鐘のことを「鰐口」と言う。
一方、神社の場合では、ジャラジャラと鈴を鳴らすことが多い。このように参拝時にもちょっとした違いがある。
これどっち?⑤:手で水を清めるのはお寺?神社?
ひしゃくを使って手や口を清める行為、その場所を手水舎というが、これを行うのはどちらだろうか。
正解は、どちらも。
水によってお清めを行うのは、どの宗教文化でも見られるやり方なのだ。
ちなみに、清めるための行為で、お寺にしか見られないものがある。
浅草寺の社殿へあがる階段の前に、煙が出ている大きな香炉がある。
人々が周りを囲い、煙を頭に浴びて「頭良くなれ~」みたいなことをしているだろう。
これは、香りのついた煙を浴びることで、お清めをするという意味がある。お寺にしかないもので、神社では見られない。
このように、お寺と神社では、そもそも宗教が違う建物であり、特徴も若干違うということが分かっていただけただろうか。
なぜ浅草寺の隣に浅草神社?
では、なぜ浅草寺には隣に浅草神社があるのか。
同じ敷地内に、違う宗教の建物があるのか。
それを次回詳しく見ていこう。
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